1.はじめに
私、弁理士 藤本昇は、1970年に弁理士登録し、本年55年目に突入していますが、現在も現役で知財紛争や知財訴訟を取り扱っている他、企業の経営者に対し知財戦略が企業の成長戦略の重要な要であることを訴えています。
私の55年間の弁理士活動の中で、産業財産権(特許・実用新案・意匠・商標)の侵害訴訟と不正競争防止法(2条1項1号及び同3号)違反事件の訴訟受任件数は、既に150件と極めて多くの訴訟実績があります(審決取消訴訟受任件数は80件)。
これらの訴訟経験を踏まえて、現在迄係争事件や交渉事件、さらには権利化業務を行うに際し、私自身の知財哲学が確立しました。主たる知財哲学としての基本理念は下記のとおりであります。
2.弁理士 藤本昇の知財哲学
(1)知財はビジネスに貢献しないと意義がない(企業は権利化が目的ではない)
(2)知財は頭脳戦争(攻撃と防衛の戦略)⇒勝利の戦略(先見性)
(3)権利化は審査官、審判官との喧嘩(理論武装と市場武装)
(4)審査基準はガイドラインであって法律ではない
(5)知財紛争、知財訴訟は相手の弁護士・弁理士との喧嘩(喧嘩は勝たねばならない)
(6)法律はいろんな解釈ができる(契約も同様)
(7)産業財産権は100点満点はない。必ず抜け道がある。
(8)技術や製品を知らずして特許・実用新案や意匠の権利範囲を論ずるな(公知資料の徹底的な調査が命運)
(9)交渉事件は自らの強みと相手の弱点を読み、弱点を攻める
(10)特許権の価値評価と棚卸
(11)企業は企業独自な競争力の強化戦略と企業価値向上のための知財戦略の強化が重要
3.知財は企業ビジネスに貢献しないと意義がないとは?
企業も弁理士もその多くは、権利化を目的としているが、企業にとって産業財産権は権利化が目的ではなく、企業に価値のある権利を獲得して競合企業に優位となり、市場を独占して稼ぐこと、すなわち権利の活用が重要なのである。知財の権利化にはコストと時間を要するため、多数の権利化を目指すのではなく、有効な価値ある権利の獲得によって競合企業に脅威を与えるべきでビジネス、すなわち経営や事業に貢献することが最重要な命題である。このことは弁理士も認識すべきで出願件数を追うべきではない。
4.知財は頭脳戦争(AIの活用と人間の頭脳力)
知財は、創造の段階から発明の価値評価、出願前の戦略が最重要で、競合企業は常にAIを活用した事前の情報分析による出願戦略(高価値化権利)が戦争の起点となる。知財戦争として攻撃力と防衛力を企業が如何に構築するかが企業の成長戦略とリスク対策の最重要テーマである。
これを実践して成果を出すには、訴訟経験も豊富で先見性があり、実力のあるプロとしての弁理士の指導が重要となる。
5.知財には100点満点はない!
如何に有名な弁理士が特許や意匠の出願を行ったとしても、100点満点の権利はない。必ず抜け道(特許や意匠の権利範囲から脱する)がある。先発企業は100点を目指し、後発企業はその抜け道を探索して価値ある企業活動を実践することである。但し知財戦略としての出願前の戦略や出願後の分割出願戦略等知財分野特有の戦略を駆使して知財価値の向上に努めることが重要。